大阪高等裁判所 昭和62年(行コ)35号 判決 1988年1月28日
大阪府守口市金下町二丁目三二番地
控訴人
中村司
右訴訟代理人弁護士
香川公一
大阪府門真市殿島町八番一二号
被控訴人
門真税務所長
山本一雄
右指定代理人
細井淳久
同
佐治隆夫
同
井上正雄
同
阿瀬薫
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴人は「原判決を取消す。被控訴人が昭和五八年三月四日付で控訴人の昭和五四年分ないし昭和五六年分の所得税についてした更正処分のうち、総所得金額が昭和五四年分につき二〇〇万円、昭和五五年分につき二〇五万円、昭和五六年分につき二二〇万円を超える部分(ただし、昭和五五年分、昭和五六年分については昭和六〇年三月七日付裁決により維持された部分)及び過少申告加算税の賦課決定(ただし、昭和五五年分、昭和五六年分については昭和六〇年三月七日付裁決により維持された部分)を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の主張、証拠の関係は、次に付加するほかは、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。
(控訴人の主張)
被控訴人は、本件係争各年分の所得税の調査に当たり、民商の事務局員の立会を拒否したものであるが、これは、他の「納税協力団体」に対する取扱いに比し、比例原則、平等原則に反する不利益扱いであるばかりでなく、この違法な手続きの基になされた本件処分は、民商の組織動揺を企図する他事考慮の処分であつて、取消しを免れない。
理由
当裁判所も控訴人の請求は失当として棄却すべきであると判断するが、その理由は次に補正するほかは、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決七枚目表一〇行目ないし一二行目を次のとおり改める。
「三1 控訴人は、民商の事務局長を調査に立会させなかつたのは不利益扱いであると主張するが、原審証人崎久保義嗣の証言によると、税務調査に当たり第三者の立会は、税理士のほかは、公務員としての秘密の守秘義務、税理士法違反等の問題を回避するため、調査のため必要のある場合に限つているに過ぎないことが認められるのであつて、控訴人においても税理士の立会をもとめることが可能であるから、被控訴人において民商の事務局員の立会を拒否したからといつて、その調査が控訴人に対し不利益扱いをしたものということはできない。控訴人の右主張は理由がない。
2 また、控訴人は、その主張する違法な調査手続きを基にしてなされた本件処分は、民商の組織動揺を企図する他事考慮の処分であるとも主張するが、被控訴人の調査が違法でないことは前記説示のとおりであり、他事考慮の処分であることを認める証拠もないから採用できない。
四 そして、控訴人が違法を主張するほかの課税要件及び課税手続の適法性については、控訴人において明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。」
二 同七枚目表末行の「四」を「五」と改める。
よつて、右と同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとし、民訴法九五条、八九条に従い、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 宮地英雄 裁判官 東條敬 裁判官 横山秀憲)